E&Jラボ2025第1回開催レポート

【E&Jラボ2025 第1回目】開催レポートLGBTQ+推進の虎の巻! ~DEIの逆風下に求められるLGBTQ+施策と具体的なアクションプラン~

2025年7月16日、2025年度第1回目となるE&Jラボを開催しました!
「LGBTQ+推進の虎の巻!」と題し、DEI逆風下に求められる職場におけるLGBTQ+施策のあり方とその具体的な推進方法について、ゲストの方々からお話を伺いました。


DEIをめぐる社会の状況と歴史的背景

冒頭では、株式会社JobRainbowの星賢人さんが、アメリカにおけるDEIの歩みと現在の逆風の状況を紹介。公民権運動やBLM、#MeTooといった人権運動のルーツについてもお話しいただき、企業の対応を比較しながら、取り組みの重要性や、表現の仕方の工夫についてもお話しいただきました。また、国内でもLGBTQ+への支持が分かれる中、企業には外向けの発信と内実の両立がますます求められているとお話しされました。

◼︎テーマ1:各社のこれまでの推進の歴史から現在まで
1つ目のテーマトークでは、各企業がこれまでどのようにLGBTQ+施策を進めてきたのか、その背景や具体的な取り組みについてお話を伺いました。

JobRainbowの星さんは、DEI施策における国際的な潮流や逆風下での姿勢について改めて強調し、企業が取り組む重要性に触れました。また、国際的な潮流を踏まえつつ、「Belonging(帰属)」の概念から打ち出すことについても示唆いただきました。

アダストリアの井上さんは、制度整備や外部連携から始まった初期の取り組み、店舗スタッフの声から実現したプライドイベント参加、そして現在は全国1,400店舗でのレインボーフラッグの掲示や動画研修の取り組みにまで広がっているとお話しされました。

PwC Japanグループの梅木さんは、2009年からのInclusion&Diversity推進の歩みを振り返りながら、当事者ネットワークの立ち上げをどのように行ってきたのか、誰もが安心して健康診断を受診できるよう「トランスジェンダー対応のある健診機関」該当基準の整備など、多角的な制度化の取り組みを共有されました。その結果として、PwC Japanグループは「work with Pride」で7年連続ゴールド受賞、4年連続レインボー認定を獲得されています。

パナソニック コネクトの油田さんは、DEIを「人権の尊重」と「企業競争力」の両面から捉え、経営戦略の一つとして推進していると強調。社外団体との連携やCEO登壇による社内対話の場づくりなど、トップダウンとボトムアップの両方を活かした文化醸成に力を入れていることをお伝えいただきました。

◼︎テーマ2:現在の逆風下で企業が実施している具体的な取り組み
2つ目のテーマトークでは、現在の社会的な逆風の中で、各企業がどのようにLGBTQ+施策を継続・発展させているのか、その具体的な取り組みや現場での工夫について語られました。

PwC Japanグループの梅木さんは、リーダーのコミットメント、制度・環境の整備、 インクルーシブなカルチャー醸成の3本柱で取り組みを推進し、その中でも特にリーダーのコミットメントが重要であると説明。リーダーがLGBT+Allyネットワークの活動に参加することや対話することで、 インクルージョンとダイバーシティが理念にとどまらず、日常の安心感につながる実践であるのだと従業員に示すことができると話しました。

パナソニック コネクトの油田さんは、「ALLY1000」という取り組みを紹介。アライ宣言をした社内のアライをイントラネットに掲載・可視化することで、当事者の安心につなげたいと考えた取り組みとしてお話しいただきました。

アダストリアの井上さんは、地方拠点の提案から始まった取り組みが、全社に展開された例を紹介。店舗ごとに現場発の工夫が広がり、制度だけでなく文化として定着しつつあることや、当事者の方の声についても触れていただきました。

JobRainbowの星さんは、社内施策に加え、企業間のネットワークの重要性についてお話しされました。「孤立しないこと」が取り組み継続の鍵であり、他社との情報共有が前向きな連鎖を生むと話しました。

◼︎テーマ3:今後の展望と課題
3つ目のテーマでは、逆風が吹く中でも今後LGBTQ+施策をどう発展させていくかについて議論が交わされました。「持続可能性や仲間づくり」の工夫がキーワードとなりました。

JobRainbowの星さんは、企業としての姿勢が社会的な信頼と連動していることを強調し、「今後は“沈黙しないこと”が問われる時代になる」と語りました。とくに、DEIに対して慎重な姿勢をとる企業が増える中でも、「方針転換」ではなく「中身を続ける工夫」ができるかどうかが重要であり、外から見えにくい取り組みも、他社と情報を共有しながら可視化していく必要があると述べられていました。

アダストリアの井上さんは、制度を導入して終わりではなく、どう定着させるかが課題だと述べ、社員の声を継続的に拾う仕掛けが不可欠だと語りました。
「飾りにならない施策」のためには、社内の多様な従業員の声を拾い、風化させない仕掛けを組み込んでいく必要があると語り、今後は社外への発信力にも注力していきたいとの展望をお伝えいただきました。

PwC Japanグループの梅木さんは、「トランスジェンダー対応のある健診機関」該当基準をPwC健康保険組合内の取り組みに留めず、より多くの健診機関に活用いただきたいとお話しされ、会場に参加された企業担当者に各社の健康保険組合での基準の導入検討を呼びかけました。

パナソニック コネクトの油田さんも、「推進担当者が一人にならない」ための体制づくりの必要性を訴え、企業間の横のつながりや経営層との日常的な関係性づくりが今後の鍵になると伝えていただきました。

◼︎クロージング:想いをつなぎ、次の一歩へ
最後には、登壇者から、LGBTQ+やDEIの推進に関わるすべての人々へ向けたメッセージが送られました。

JobRainbowの星さんは、「迷ったときこそ、原点に立ち返ることが道しるべになる」と語り、「ひとりで頑張らず、悩みを共有しながら進んでほしい」と温かく呼びかけました。

アダストリアの井上さんは、「完璧を目指さなくていい」と力強く語りました。「できることから確実に始めること」が大切であり、それぞれの企業や立場に応じた歩みを肯定していくべきだとお話しされました。

PwC Japanグループの梅木さんは、「理解者を増やし、ともに推進してくれる仲間を増やすこと」が継続の力になるとし、「”Be yourself. Be different.” 」という社内のキーフレーズを紹介。「違っていて良い」「違いが力になる」という前向きな価値観が、一人ひとりが成長し活躍できる組織を支えているとお話しされました。

パナソニック コネクトの油田さんも、「推進担当者が孤立しないための仕組み」が今後の重要な課題だと指摘しました。そして最後に、「DEIは社会の希望そのもの。だからこそ、諦めずに続ける価値がある」と、熱意のこもった言葉で締めくくりました。

日々現場で葛藤しながらも、信じて取り組みを続けてきたからこそ伝えられる、リアリティとあたたかさに満ちた言葉が会場を包みました。

今後もE&Jラボでは様々なダイバーシティ推進に関するテーマでゲストをお呼びし開催していきます!街の中でダイバーシティを楽しみながら推進するコミュニティにご関心のある方はぜひご参加ください。