E&Jラボ2025 第3回開催レポート

【E&Jラボ2025 第3回レポート】対話を楽しもう! 音のない世界で言葉の壁を超える

2025年10月17日、今回はE&Jフェス!2025(10/17-18開催)のプログラムの一環として、今年3回目となるE&Jラボを開催しました!

テーマは「対話を楽しもう! 音のない世界で言葉の壁を超える」。
聴覚障害のある方と一緒に働く職場のリアルを切り口に、みんなで“対話の壁”を越えるヒントを探す2部構成のプログラムでした。

第1部
ダイアログ・イン・サイレンス ショーケース in 大丸有SDGs ACT5

第1部では、音のない世界でコミュニケーションを行う体験「ダイアログ・イン・サイレンス ショーケース in 大丸有SDGs」が行われました。
世界各国で100万人以上が体験してきた人気プログラムを、60分間に凝縮した特別版です。
参加者は3グループに分かれ、音を完全に遮断するヘッドセットを装着し、聴覚に頼ることができない「音のない世界」に入ります。

この静寂の世界を案内するのは、聴覚に障害のあるアテンド(案内役)です。参加者は、アテンドのガイドのもと、音声言語を一切使わず、表情、ジェスチャー、アイコンタクト、ボディランゲージなど、視覚的な情報だけを頼りに、他者とコミュニケーションを取りながら様々なミッションに挑戦しました。

印象的だったのは、アテンドの方々の豊かな表情とジェスチャーです。言葉を発さずとも、全身を使って思いや意図を的確に伝えている姿に、参加者の多くが驚かされていました。
最初は互いにぎこちなかった参加者も、次第に表情やジェスチャーが豊かになっていきました。眉を上げたり、目を見開いたりと、言葉の代わりに全身で気持ちを伝えようとします。
相手の目や手の動きに注目しながら、伝え合う内に少しずつ息が合い、意思疎通が取れた瞬間には笑顔と無音のハイタッチが生まれました。

音のない世界でコミュニケーションを取ることの難しさと楽しさを体験する第1部で、参加者の方々からも「普段の自分のコミュニケーションの取り方について考えさせられた」「初めて知った世界だった」というような声をいただきました。

第2部
【E&Jラボ2025 第3回】対話の虎の巻!

第2部では、「対話の虎の巻」と題し、ICTを活用した聴覚障害者の働きやすい環境づくりについて先進的な取り組みで知られるサイボウズ株式会社とソフトバンク株式会社の担当者の方々に自社の取り組みや風土についてお話を伺いました。

◼︎サイボウズ株式会社

理念を共有し、誰もが参加できるチームへ
人事本部・多様性理解促進チームに所属する平賀さんからは、まず理念をみんなで共有することの大切さについてお話がありました。

「チームワークあふれる社会を創る」という理念を掲げるサイボウズでは、単に障害者の「雇用」を進めるだけでなく、「チームに参加できる人を増やす」ことを目指しています。
同社が目指しているのは、多様な背景を持つ人々が「100人100通りのマッチング」で一緒に働ける環境です。

ICTでつくる“オープン”な情報共有の仕組み
その理念を表す取り組みの一つが、自社製品「kintone」を使った情報共有アプリです。
このアプリでは、社員が自分の障害特性や、仕事で必要な配慮(たとえば「会議ではUDトークを使いたい」「口で言われると聞き逃すことがあるので、文字でも教えてほしい」など)を自分で入力し、チーム内外のメンバーに共有できます。

平賀さんは、この仕組みが「配慮を求める側」の心理的な負担を軽くすると同時に、「配慮する側」も具体的に何をすればいいか分かりやすくなる、という効果があるとお話しされました。ICTを活用して障害についてのコミュニケーション不足や接し方の不安をなくし、オープンに話せる土台をつくっているそうです。

現場で支え合う、当事者と仲間のつながり
聴覚障害の当事者として働く堀さんからも、現場での具体的なサポート体制について説明いただきました。
まず、ICTによる情報保障が徹底している点です。社内会議や朝会など、オンラインではzoomやteamsの字幕機能を使い、オフラインでは「YY文字起こし」が活用され、話したことがリアルタイムで文字化されます。これにより、聴覚障害のある社員も、他の社員と同じように情報をキャッチし、議論に参加できます。このようなツールを用いて情報にきちんとアクセスできることが、対等なチームワークのスタートラインだと堀さんはお話しされました。

さらに、「ピアトーク」という、障害者雇用で入社したメンバーが交流できる社内コミュニティの存在も大きいとのことです。これは、当事者同士が悩みや課題を共有し、解決策を話し合ったり、会社への提案をまとめたりしています。社員が孤立せず、仲間とつながりを感じながら働ける環境づくりに役立っているとご紹介されました。

◼︎ソフトバンク株式会社

「障害に配慮はするが、遠慮はしない」——対等な関係を目指して
ソフトバンクは、「障害に配慮はするが、遠慮はしない」という考え方を掲げています。これは「障害があるから」と特別扱いして仕事の範囲を狭めるのではなく、一人の戦力として対等に接しつつ、その上で必要な合理的配慮をきちんと行うという姿勢を表しています。

採用段階から始まる体制づくり
人事総務本部で人材採用を担当する伊藤さんによると、この考え方は採用の段階から一貫しています。
同社では、障害のある社員が部署に配属される時、その部署の上司や指導担当の先輩社員向けに、必ず事前にセミナーを実施しています。
このセミナーでは、障害特性や具体的な配慮の方法について丁寧に共有し、受け入れる側の不安や誤解を解消します。これにより、配属初日からスムーズに協同できる体制を整えているとお話しされました。

現場でのコミュニケーション
聴覚障害の当事者であり、モバイル事業推進本部でサービス企画を担当する河野さんは、Slackやチャットなどのデジタルツールを日常的に活用する環境が、誰にとっても働きやすい職場づくりにつながっていると語ります。
業務のやりとりが文字として可視化されることで、情報が正確に共有され、後から誰でも確認できる。こうした情報の透明性が、結果的に聴覚障害者にとっても働きやすい環境を生み出しているといいます。

さらに、音声文字化アプリ(UD トーク)の導入により、これまでサポート担当者が担っていたPCテイク(発言内容をすべて文字化する)などの負担が大幅に軽減されました。サポートする側の心理的負担が減ることで、より自然でフラットなコミュニケーションが生まれていると、現場からのリアルな声も紹介されました。

◼︎最後に:両社に共通する「本質的な職場環境づくり」とは
両社のお話から見えてきたのは、ICTを活用した情報保障だけでなく、「心理的安全性」が担保された職場環境づくりの重要性です。

単にICTを用いるのではなく、理念や文化、そして人とのつながりを通して、一人ひとりが安心して意見を交わし、チームの一員として活躍できる環境を育んでいる点に、両社の取り組みの本質があると感じました。

今後もE&Jラボでは、様々なダイバーシティ推進に関するテーマでゲストをお呼びし、繋がり、共に交流しながら学べる場を作っていきます。企業の枠を越えて、ダイバーシティを楽しみながら推進するコミュニティにご関心のある方はぜひご参加ください。