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大丸有エリアのシェフ向け「SUSTABLE for シェフ~大丸有エリアのサステナブルフード試食会~」開催レポート

2025年11月21日(金)、大丸有エリアのシェフの皆さまを対象に「SUSTABLE for シェフ~大丸有エリアのサステナブルフード試食会~」を開催しました。
本イベントは、大丸有エリアで進められているSDGsの取り組みについて理解を深めていただくことを目的に、食を通じたサステナブルな活動をご紹介し、試食・試飲を交えながら学んでいただく機会となりました。

濠プロジェクト・菱循環野菜のご紹介

まずは、三菱地所の二ノ宮氏より「濠プロジェクト」についてご紹介いただきました。
皇居外苑の濠は、かつて玉川上水から水が供給されていましたが、閉鎖水域となり水質悪化が課題に。浄化施設の整備などにより改善が進み、現在は生態系保全にも取り組んでいます。2017年からは、環境省・日本自然保護協会等と連携し、絶滅危惧種の水草の保全活動を開始し、これまでに11種類の水草の発芽・育成に成功、そのうち6種類は東京都および環境省のレッドリストに掲載される希少種です。毎年夏から秋の間には、泥に種子が眠っている可能性のある水草の復元を目指して、大丸有エリアのワーカーの方々とお濠に入り、お濠の生き物観察と泥の採取を行っています。(今年度の活動はこちら

一方で、水草が増えすぎると生態系に悪影響を及ぼすため、環境省が刈り取る「菱」を堆肥として再利用し、有機野菜の栽培に活用するのが「菱循環野菜」です。廃棄物削減と地域資源活用を両立するこの仕組みは、循環型農業のモデルとして注目されています。

生産者トークセッション:畑山氏・井上氏 × 三菱地所 長町氏

今回は、この堆肥を使って有機野菜を育てる生産者の畑山氏(畑山農場)と井上氏(ファーマン)、そして三菱地所の長町氏を交え、菱堆肥の効果や地方と都市部の連携についてお話いただきました。

畑山氏は大学時代、有機農業のアルバイトをしたことがきっかけで 「自然の中で心豊かに暮らしたい」という想いが強くなり、大学院卒業後、24歳で山梨に移住、現在約3.5ヘクタールの畑で年間約40品目の野菜を農薬化学肥料を使わずに有機栽培されています。

井上氏も埼玉県からの移住組で、現在は有機野菜の生産販売、農福連携、農観ツーリズム、宿泊施設、農産加工品販売、廃校活用など様々な仕事づくりにチャレンジされており、有機栽培では約30品目の野菜を生産されています。

長町氏:改めて有機栽培のメリットについて教えてください。

畑山氏:自然由来の有機物を堆肥化することで微生物が活性化し健康な土づくりが可能になり、それによって野菜が健康に育ち美味しくなります。地域資源を循環利用することで持続可能な農業を実践でき、また、炭素貯留、水質汚染防止、生態系保全の効果も期待できます。

長町氏:先ほど説明があった通り、皇居外苑濠の水草「菱」を堆肥にして、野菜を作っていただいていますが、堆肥の魅力、また、味や品質の変化などあれば教えてください。

畑山氏:菱には微生物のエサになる繊維分や野菜の生育に欠かせないミネラルなどの微量要素が含まれます。繊維分が多い堆肥のほうが良い土づくりができるため、野菜が健康に育ち、病害虫にも強くなります。健康に育った野菜は甘味、旨みのバランスが良く味わい深く、すっきりとした後味になり、栄養価が高くなる傾向があります。

長町氏:この菱堆肥については、ロイヤルパークホテルズ、三菱地所の社食、皇居外苑にある楠公レストハウスなどで使っていただいています。この夏にロイヤルパークホテルズのシェフや料飲部の方々をお二人の農場にお連れしましたが、いかがでしたか?

井上氏:実際の栽培環境を見ていただけた事が何より嬉しかったです。また、シェフの方々より野菜の使用方法をご検討いただき、玉ネギカクテルの案も出ました。現地での意見交換によりアイデアや新しい取組みに繋がる事は本事業での醍醐味だと感じています。

長町氏:都市部と地方の交流のメリットは何だと思いますか?

井上氏:どちらもお互いの環境や流れを知る必要があると思っています。消費地である都市と生産地である地方で楽しく学び合う事が、これからの再生・持続性のある社会形成には必要だと感じます。どちらかが無理をするのではなく、どちらも興味関心を持って取り組む事ができる、そんな交流の輪を広げたいと考えています。交流によるメリットは、事業化やQOLの向上など、可能性に溢れていると感じます。

長町氏:今後の展望などを教えてください。

井上氏:菱を再利用した堆肥製造については、もっと多くの製造にチャレンジしたいです。 現在は畑山さんと井上の農場のみでの使用ですが、北杜の多くの生産者とシェアし、さらなる循環野菜の納品や取組みの広がりを持たせられたらと考えています。また、シェフツアーなど企業の枠を超えた交流への発展にも取組みたいです。

丸の内ハニープロジェクトのご紹介

続いて、丸の内ハニープロジェクト(事務局:エコッツェリア協会)の松井氏より「丸の内ハニープロジェクト」についてご紹介いただきました。
本プロジェクトは2016年に始まり、今年で10年目を迎えます。大手町・丸の内・有楽町エリアでは都市型養蜂に取り組み、大手町ビル屋上での採蜜では、半径2~4kmの花々からミツバチが蜜を運び、年間で最大800kgもの蜂蜜を採取することもあります。今年は約300名以上が採蜜体験に参加し、個人だけでなく企業単位での参加も増加。採蜜した蜂蜜を店舗で活用するなど、地域のつながりを生む取り組みとして広がっており、企業のサステナビリティへの関心も高まっています。

ミツバチが集める蜜は季節や花の種類によって味や色が変化します。例えば、4月下旬、5月上旬、5月中旬の蜂蜜を比べると、色や風味に明確な違いがあり、街の花の移り変わりを感じることができます。都会では非常に貴重な、ミツバチを通じた「エリアの自然の変化を知る」体験です。さらに、花粉分析を通じて都市の植物分布や自然環境の変化を把握し、持続可能な都市づくりに活かす取り組みも進めています。

最近では外国人観光客からの関心も高まっており、今後もデータ分析や環境調査を活かしながら、街の価値を高めるプロジェクトとして継続していく予定です。

常盤橋タワーでの廃棄物再利用の取組みご紹介

最後に、三菱地所の松橋氏より、常盤橋タワーでの廃棄物再利用の取り組みについてご紹介いただきました。この街区は「日本を明るく元気にする」というビジョンを掲げ、サステナブルな街づくりを重視しています。三菱地所グループでは2030年までに大丸有エリアのリサイクル率100%を目指していますが、現状は約59.5%にとどまっており、その課題解決の一環として生まれたのが、クラフトビール「TOWN CRAFT」とクラフトジン「Bloomy」です。

常盤橋タワー地下には、徳島県上勝町と連携して導入したコンポスト(堆肥化装置)が設置され、毎日生ごみを投入し液体肥料に変換しています。この液肥を使って育てた米や麦、果物などを原料にクラフトビールを製造。特に上勝町特産の柑橘「ゆこう」と小麦を使用したビールは、爽やかな香りと軽やかな飲み口が特徴です。毎年、このビールを中心に「フューチャービアガーデン」というイベントも開催されています。

さらに、コンポストに入れられないコーヒーかすを再利用するため、クラフトジン「Bloomy」を開発。コーヒーの深みと柑橘のフルーティーさが調和した味わいで、幅広い世代に好評です。廃棄物を価値ある製品に変えるこの取り組みは、循環型社会の実現に向けた象徴的な事例となっています。

サステナブルフードの試食会

シェフと生産者のお二人
菱循環野菜を使ったサラダ
朝採れのカブ
丸の内ハニー
TOWN CRAFT
Bloomy

今回の試食会では、「菱野菜のサラダ」、「丸の内ハニー」、「クラフトビール『TOWN CRAFT』」、「クラフトジン『Bloomy』」を参加者の皆さまにお試しいただきました。どの品目も大変好評で、「年明けにメニューで使用したい」「スタッフで試飲し、メニューに加えたい」との声が寄せられました。

こうした反応から、サステナブルな食材や取り組みが、実際の現場で活用される可能性を強く感じることができました。大丸有エリアでは、今後も食を通じてSDGsの理解促進と持続可能な街づくりを目指し、さまざまな取り組みを進めてまいります。

アクション実施概要

実施日時2025年11月21日(金)14:30〜15:30
開催場所MY Shokudo Hall&Kitchen
(東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F)
出演者(順不同)◆畑山農場 畑山貴宏 氏
◆株式会社ファーマン 井上 能孝 氏
◆三菱地所株式会社 二ノ宮 瑠里子 氏
◆三菱地所株式会社 長町 真理子 氏
◆丸の内ハニープロジェクト(事務局:エコッツェリア協会) 松井 宏宇 氏
◆三菱地所株式会社 松橋 由乃 氏
参加者大丸有エリアにおけるレストラン・ホテルのシェフ、購買担当者
参加費無料
主催大丸有SDGs ACT5実行委員会
三菱地所株式会社