「サステナブル・フード」について“おいしく・楽しく”知っていただくための新プログラム「SUSTABLE」の第5弾【サステナブルな農業】が2021年11月9日に開催されました。
私たちの日々の糧となるお米やお野菜。これら農産物を安心・安全に、そして将来にわたって持続的に生産し、未来の子どもたちを育むためにはどんな課題があるでしょうか。今回のSUSTABLEでは、「持続可能な農業」について考えました。
まずは、「はくい農業協同組合」の代表理事組合長・山本好和氏と経済部 部次長・粟木政明氏が登壇しました。はくい農業協同組合は、石川県羽咋市で「自然栽培」を軸とした地域づくり・地方創生に取り組んでいます。自然栽培との出会いから、羽咋市との連携など今日に至るまでの努力、そして今後の課題など、その時々の想いも交えながらお話しいただきました。
はくい農業協同組合では、環境に配慮した農業への従事者を増やすために、農泊やモニターツアーなどの“関係人口づくり”から始まり、「のと里山農業塾」での“普及啓発活動”、そして農機の借用サポートや加工品開発・販売など、最終的な“自立支援”を促す段階的なスキームを用いることで、自然栽培の聖地化を目指してきたそうです。その成果として学校給食に年間1.5トンの自然栽培米を提供するなどの実績もご紹介いただきました。
続いて、山梨県北杜市で農薬・化学肥料を使わずに野菜を生産し、自家採種の取り組みも行う「畑山農場」の畑山貴宏氏が登壇。有機農法で育った野菜の「美味しさ」に感銘を受け、山梨に移住して有機農家になることを決意したことや、有機栽培の魅力とその普及課題について、冷静ながらも熱くお話しいただきました。
また、畑山農場の取り組みの一つである、農作物から種を自ら採種して栽培に利用する「自家採種」についてもお話頂きました。「自家採種をすることで自然のサイクルを感じたいと思っている。」という言葉が印象的でした。また、在来種のお野菜についてもご紹介いただき、スーパーでは目にすることのない、ずっしりしたとうもろこし(甲州もろこし)や、巨大なきゅうり(増冨きゅうり)のお写真に会場から驚きの声も。畑山氏の活動は有機野菜の生産にとどまらず、北杜市内の新規就農者支援や出荷グループの立ち上げなど、地元の農家仲間とのコミュニティを大切にしながら、有機農業の広がり・定着を目指して尽力されていることもお話しいただきました。
また、会場キッチンでは、練馬区石神井公園「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO」のシェフであり、“人の繋がりで地域に長く根付くレストラン”を提案する岩澤正和氏が、羽咋市の自然栽培米と畑山農場の有機野菜を使用し、なんと、4皿ものお食事を提供。
●MENU
・山梨北杜市の畑山さんが育てた朝採れカブのサラダ 静岡産無濾過オリーブオイルと五島列島の粗塩で
・山梨北杜市の畑山さんが育てた無農薬栽培野菜と能登半島無農薬栽培で育てたJAはくいさんの玄米のミネストラ
・山梨北杜市の畑山さんが育てた無農薬栽培わさび菜とパルマ産生ハムとフォカッチャ
・能登半島無農薬栽培で育てたJAはくいさんのお米のアロスコンレーチェ
・東京都練馬区の農家さんと障害者の方々で協力して作っているアスパラの茎茶
・愛媛県東温市の無農薬はだか麦を使ったホット麦茶
1皿目のカブのサラダは、「畑山さんの採れたてカブの美味しさをストレートに味わって欲しい!」と岩澤氏立っての希望で登場した一皿。イベントの朝に収穫したばかりの泥つきのカブを、イベントスタートと同時に泥を落とし、包丁を入れ、フレッシュなままテーブルに提供しました。
なんとこのカブは、このトークイベント開催が決まった9月、「畑山農場の畑を体感したい!」と岩澤氏率いる PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO のメンバーが山梨県の畑山農場を訪れ、畑山氏の指導の下で種を植えたもの。順調に生育し、イベント当日にお披露目となりました。岩澤氏の行動力、そして有機農家を応援したいという熱意と優しさに、会場は和やかな雰囲気に包まれました。
ミネストラは北イタリアに滞在中、体調を崩した岩澤氏に地元のおばあちゃんが出してくれたという思い出の料理。有機野菜から取った出汁に、自然栽培米の美味しさを丸ごと味わえるよう玄米のままで煮込みます。野菜とお米の優しい風味の一皿に、岩澤氏のサプライズで香り高い白トリュフを!
その後のトークセッションでは、はくい農業協同組合から、一般的には肥料や農薬の販売を行う「JA」が敢えて「自然栽培」を展開する理由や、「農業従事者の生活を少しでも豊かにしたい」という想い、そして、頑張る農家さんたちの動きを見て、少しずつ地域の方々にサポートいただけるようになったことなど、ゲストとの会話のなかで、忌憚ないお話をいただきました。畑山氏からは、有機栽培を広げていくためには、地域との連携や協力が重要であることなど、就農者の立場から実体験とともにお話しいただきました。
岩澤氏からは、「自然に寄り添った農法で作られた食材は美味しい。今日はそのことが皆様にも伝わったと思います。現状ではそれらの食材は少々値が張りますが、その価値を認めて、選んでほしいと思います。」との言葉が。 PIZZERIA GTALIA DA FILIPPOでは、”生産者の顔・工夫・想い”という背景のある食材を、基本的に生産者の提示価格で買い取っているそう。「畑山さんやはくいさんなど、素晴らしい食べ物を作られる生産者さんをこれからも応援していきたい」と岩澤氏。
この言葉を受け、山本組合長も「今は年6回の提供にとどまっている地元校給食への自然栽培米の提供を、近い将来、1年を通じて提供できたらと思っています。そのためには年間20トンの栽培が必要ですが、まだ自然栽培の農地も生産者も足りない状況。将来の子どもたちのためにも少しでも増やしていけたら…」と熱く語る一幕も。
最後に、会場参加者には畑山農場から有機野菜のお土産を。「畑に雹(ひょう)が降った影響で、小松菜が破けてしまい市場に出せなくなってしまいました。ですが、味はとっても美味しいお野菜です。“農家は毎日自然災害に遭っている”と言う言葉もありますが、その苦労にめげずに自然と共存してやっていくのが農家。その苦労の一部をぜひ食べてみてください」と畑山氏。
今を生きる私たちだけではない、将来の子どもたちを育むサステナブルな農業を支えるためにひとりひとりに何ができるかを真剣に考える夜となりました。
アクション実施概要
開催日時 | 2021年11月9日(火)18:30〜20:00(開場18:00) |
開催場所 | MY Shokudo Hall & Kitchen(東京都千代田区大手町2-6-4 TOKYO TORCH 常盤橋タワー3F) |
出演者 (順不同) | ◆はくい農業協同組合 代表理事組合長 山本好和氏 ◆はくい農業協同組合 経済部 部次長 粟木政明氏 ◆畑山農場 代表 畑山貴宏氏 ◆PIZZERIA GTALIA DA FILIPPOシェフ 岩澤正和氏 |
定員 | 会場参加:30名/オンライン参加:500名 |
参加費 | 会場参加:1,000円/オンライン参加:無料 |
主催 | 大丸有SDGs ACT5実行委員会/三菱地所株式会社 EAT&LEAD |
後援 | 国連広報センター |